1.汚染と身体

 

環境文学は、汚染に関わる様々なテーマを明確に焦点化してきた。環境は複合的で、エコシステム 全体に循環的に汚染が浸透拡大することは言うまでもない。中でも土質汚染や川や海の水質汚染、空気汚染は農業を破壊し、様々な薬品と化学物質の複合作用が もたらす深刻な被害が、いきものと共同体や家族、ジェンダー、出産する身体と心にもたらす結果が文学作品のテーマとなってきたが、先鞭をつけたのはやはり 『沈黙の春』であった。また核実験や核災害による被爆や被曝、広範囲な大地や海洋の壊滅的な汚染が、生活を破壊し、生物全般に連鎖的に引き継がれ、核物質 と核廃棄物汚染が特定地域やエスニックとも深く関わり、世界各地で癌性の病を引き起こしてきたことで環境文学の新たなフェイズが始まったといえる。グロー バルな世界で汚染は地球という惑星全体に広がり、気候異変も深刻であるが、スザンナ・アントネッタ、アナ・カスティヨ、オードリー・ロード等多様なエスニ シティの作家が、ダイアリー、ドキュメンタリー、メモワールなど独特の語りで身体的苦境を力強く発信してきた。具体的には『オルタナティヴ・ヴォイスを聴 く――エスニシティとジェンダーで読む現代英語環境文学103選』第1章を参照されたい。 


(伊藤詔子)

 

 





 

     



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