「食は人なり」と言われるように、食は私たちの文化やア イデンティティー形成と深く関わってきた。そして食に繋がる農業(アグリカルチャー)もまた、社会や文化(カルチャー)を反映した人間的な行為であるとい えよう。しかし一方では食のグローバル化や工業製品化、遺伝子組み換え問題も進行し、その文化的・社会的・経済的要素から、環境文学のなかでも極めて学際 的な位置を占める食と農業の問題は、人間とエコシステムの相互依存的関係とグローバル経済の弊害を含む重要なテーマとして文学作品や映像作品のなかで描か れてきた。具体的には『オルタナティヴ・ヴォイスを聴く――エスニシティとジェンダーで読む現代英語環境文学103選』第6章を参照されたい。 (松永京子)
第6章 食と農業 目次
38 ミシシッピの農業的不公正(マイケル・ゴーマン/岸野英美訳)
アン・ムーディ『貧困と怒りのアメリカ南部――公民権運動への25年』(1968)
39 アグリカルチュラル・ヴォイスの原理(マイケル・ゴーマン/松永京子訳)
ゲーリー・ソト『ゲーリー・ソト詩選集』(1995)
40 子どもの視点から浮き彫りにされる移民農民の苦闘(中島美智子)
エルヴァ・トレヴィーニョ・ハート『はだしの心――移住農民の子どもの物語』(1999)
41 遺伝子組み換え作物と多様性(深井美智子)
ルース・L・オゼキ『オール・オーバー・クリエーション』(2003)
42 近代的産業食物連鎖の批判(毛利律子)
マイケル・ポーラン『雑食動物のジレンマ――ある4つの食事の自然史』(2006)
43 農業と日系移民の歩み(岸野英美)
デイヴィッド・マス・マスモト『最後の農夫の知恵――土地から遺産を収穫すること』(2009)
コラム17 土地と農業を考える(深井美智子)
ウェンデル・ベリー『揺らぐアメリカ』(1977)
コラム18 映像文化にみる食の未来の行方(松永京子)
デボラ・クーンズ・ガルシア監督『食の未来』(2004)
ニコラウス・ゲイハルター監督『いのちの食べ方』(2005)
ロバート・ケナー監督『フード・インク』(2009)